課題解決 事例紹介

本来の請求業務DXを実現 [低コスト・競争力・柔軟性]

業務概要

見積書を何種類か提示後、その内の1つが商談成立対象。

ところが、その後納品までに変更があり、請求時に値引きが求められる。

このため、納品書、請求書の作成時に人海戦術で大わらわとなる。

課題

基本的には見積もり時の情報を使うにもかかわらず、一部変更があるために、毎回全てを手入力している。

このため、時間がかかるだけでなく、転記ミスが生じ、顧客への信用問題となっている。

対策

原則として、見積もり時の情報を使い回すことで、転記そのものを不要とする(転記を自動化、しない)。

途中の変更履歴が残せるようにすることで、従前できたことは実現できるようにする。

請求書が手作成となる理由

見積もりとは異なる請求内容

複数の顧客で共通の課題として戴いた相談ですが、見積もり時と納品時、請求時で、それぞれ内容が異なる業界において、納品書・請求書の作成が自動化できるかどうか、というテーマです。

見積もりと全く異なる内容で請求を出すことはまずないので、内容の大半は見積もり時の情報を使い回すのですが、建設業界や情報システム開発業界のように、途中で要望が変更/追加になるのが半ば常識の業界では、納品(引き渡し)時の内容がすでに見積もり時から変わっているのが常識です。

また、納入後も要望や不備への対策などがあるため、納品時と請求内容も変わることが少なくありません。

また、卸売業や製造業では、請求時に端数分の値引きが求められることがあり、例えば1000円単位で切り捨てを行うことがあります。

このように、見積書の内容を転記すれば請求書になる、わけではない場合、はやりの「ノンコード/ローコード」ツールでは、対応が難しくなります。

見積・納品・請求それぞれ内容が異なる例

「転記」から「ステータス」へ

当社の手がけた事例では、いずれもステータス(状態)が遷移すると捉え、同じ内容の体裁だけを、見積→納品→請求のように進めていく、という考え方に基づき、モデル化しています。

こうすることで、途中で追記や変更があっても、オリジナルからの継承性が維持され、どのタイミングでどのように変わったかを追うことができます。

実は、こうした仕組みは、Excelだけで、「ノンコード/ローコード」で実現することが可能です。例外ルールが少なければ、1週間~2週間程度で、各社固有ルールを反映した請求業務支援ツールが実現可能です。

後続業務への応用

月単位で集計

単に請求書を自動作成するだけであれば、効果も限定的です。

一般的には、月単位で請求書を送ります。そのためには、集計のしくみが必要です。

見積と請求の関係、請求するには集計が必要となる。

はやりのクラウドサービス的に行う場合、SharepointやTeamsと組み合わせることで、特定領域にUploadした見積/請求データを集計することもできますが、わかりやすさで言えば「特定フォルダにあるファイルを全て集計」する方式でしょう。このやり方であれば、1日か2日程度で集計可能です(標準化されている場合)。

会計業務への接続してDXを実現

請求書を出すと、多くの企業では経理部門に控えを渡しているはずです。経理部門では、これを基に売掛金の仕訳を起こし、入金があれば消し込んで、未収を検出しています。

これも当社の顧客事例ですが、少なからぬ割合で、会計ソフト用に売掛金の仕訳データを自動作成し、経理部門ではファイルを読ませるだけで、再入力を無くしています。

条件によっては、こうした一連の流れをタイマー起動で深夜に自動実行しており、翌日には全社で売掛見込情報が共有されるようになっています。

ここまで実現できれば、「DX」といえそうです。

DXとは、一言で言えばどういうことか

最近ブームとなっている「DX」は、「Digital Transformationの略」だそうですが、略になっていないので、余計に意味不明です。

DXを簡単に表現すると

    1. デジタル技術を活用し
    2. 業務プロセスの変革を行い
    3. 競争力を向上させる

ということになります。
DXの最終目標は競争力を向上させること
ここで重要なのは、目的が「③競争力を向上させる」ことであって、DX自体が目的化しかねない中、留意が必要です。

もちろん、「①デジタル技術」を十分に理解できていなければ、活用できるはずもありません。

DXが目的化すると、どうなるか

多くの企業では、DXそのもの(場合によっては、デジタル技術導入そのもの)が目的となっているようです。

DXが目的化してしまうと、

1.他社も導入している(であろう)、クラウドサービスを導入する 提供社がなくなる、他社と合併、バージョンアップ・・・→ 今のサービスが停止
2.自社のパソコン・サーバで行っていることを、クラウド化する ルータが故障/回線不調時に、利用不能 / 毎月高額な利用料が発生
3.とにかく、何でも自動化しようとする 例外に対応できない / 設定内容がブラックボックスで、メンテナンスできない

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といったことが起こり、「③競争力を向上させる」どころか、クラウドサービス依存が高まり、ネットに接続できないと業務が止まってしまったり、しくみがわかる社員がいないと変更できなくなったり・・・と、目的と逆の事態を招きかねません。

請求業務のDXは、どうすればよいか

自動化=DXではない

大抵の場合、「請求書の転記作業を自動化したい」というご相談を戴きますが、前述のような例外対応が求められるからこそ、自動化が進まないのであって、単純に自動化してしまうと、例外に対応できなくなってしまいます。

とはいえ、月初に残業が発生したり、作業ミスで誤請求につながっていたり、という課題が生じている以上、なんとかしなければなりません。

方針としては、国の機関であるIPAでも、「業務改善よりも業務改革」としている通り、発想を転換する必要があります。

そもそも請求書とは何か

そんな時には、原点に遡って考えるのが効果的です。

国税庁の課税売上等に関する事務処理指針に基づき、請求書には以下の項目を必ず記載する必要があります。

請求書発行者: 氏名または名称、住所
取引年月日: 商品の引渡し日または役務の提供日
取引内容: 商品の名称または役務の内容、数量
取引金額: 対価の額、消費税額
請求書の交付を受ける事業者: 氏名または名称、住所

請求されなければ、支払われませんし、根拠や金額について請求先と認識が合わなければ、支払いに応じてもらえません。

請求書を受け取った側では、請求の根拠として保管が法的に求められており、一定の情報を含むことが求められます。

別の言い方をすれば、目的に叶えば、体裁はどうでもよいのです。

競争力は向上しているか

そもそもの話として、請求処理が省力化されたとして、競争力の向上につながるのでしょうか?

「風が吹けば桶屋が儲かる」的に無理矢理解釈すれば、競争力は向上するかもしれませんが、実際のところ、単なる省力化でしかありません。

省力化はコストダウンであり、競争力は売上/利益の向上ですから、まるで違う概念です。
請求処理を自動化することでDX化(競争力の向上)が達成されるのか

前後の業務に目を向けてみる

請求書の発行は営業部内のケースが多く、このため同じ部署で作成する見積書→納品書→請求書の流れがつながって見えます。

ところで、請求書は発行すれば、必ず入金されるわけではありませんし、入金されない限り売上として計上することもできません。

こうした認識をしているのは、実は経理部門であり、請求を出した段階で売掛金として認識し、入金が確認できて初めて売上として処理をします。

俗に「黒字倒産」といわれる、「帳簿上は黒字なのに、手元現金がなくて決済不能に陥る」事態を回避するには、資金繰り(キャッシュフロー)の管理が必要です。

このためには、売掛と現金化するタイミングを正確に把握しておく必要があり、大きな投資/仕入などの際の意思決定に重要な役割を果たします。

このように、他部署が行っている前後の業務にも目を向けていくと、他にも「①デジタル技術を活用」すべき対象が浮かび上がります。

当社の事例では、請求書を発行するタイミングで、会計ソフト用の売掛仕訳データを作成したり、入金(振込・でんさい・クレジットカード等)の支援機能につなげたり、という広がりを見せることが少なくありません。

自動化の盲点

例外事象に対応できるか?

いずれの業務においても、例外的な事象が発生した場合に、どのように対処するかを想定しておくことが肝要です。

例えば、入金時に振込手数料分が差し引かれるケースは小売業では日常茶飯ですし、1桁間違えて振り込まれることも年に1度くらいはあるでしょう。

これが、「全自動」になっていると、こうした例外を吸収できず、それこそ機械的な対応でエラーにされかねません。

当社が得意とするExcelを使った実装では、一度Excelシートの上に展開して「見える化」した上で、例外があれば手で介入できる余地を残しておくので、大抵の例外には対応できます。

自社でDXを行う場合

①デジタル技術を理解する

たまたま見かけたクラウドサービスがよさそうに見えても、他にももっとよいものがあるかもしれません。

すでに導入している場合でも、それが現状のベストの選択肢か、他に代案はないか、といった視点での見直しが有効です。

②業務プロセスをゼロベースで見直し、変革する

今やっている手順を、そのまま自動化しても、業務プロセスの変革にはつながりません。

別のやり方がないか、発想を変えて、それこそ対象範囲の見直しから行うべきです。

デジタル技術の理解も、業務プロセスの見直し方も、不安な場合

当社では、匿名で電話相談に応じています。

電話口なので、現状のお困りごとを聞いた範囲でお答えできる内容となりますが、5~10分ほどで約半数の方が「方針が見えてきたので、自力で再検討してみる」との感触を得ています。