道具としてのExcel活用

Excelで在庫管理(1)基本的な考え方

在庫管理とは何かと問われて、自分の言葉で説明できる方は、果たしてどれだけいるでしょうか?
「そんなもの、在庫を管理することに決まってるじゃないか」と叱られそうですが、
「管理する」の具体的な内容が、100社あれば100通りあるので、一筋縄ではいきません。
なぜそんなにバリエーションがあるかといえば、管理対象物の特性によって考え方が大きく異なるのと、
在庫を「管理」することで実現したいことが異なるからです。

100社あれば100通りの在庫管理手法

例えば、ある会社では、在庫している原材料が途切れないようにするのが「管理の目的」です。
別の工場では過剰在庫が過大な資産負担となっているので極小化したいのが「管理の目的」です。
また別の会社では今取り扱っている商品が何かを即答できるようにしておくのが「管理の目的」…
というように、目的からして大きく異なります。
中には「何がいくつあるか知りたい」というニーズもありますが、「管理」というより「現状把握」です。

このため、万人に通じるような在庫管理の定義というのは難しいのですが、
「在庫しているモノを、あるべき適性値に近い状態に維持すること」ということになりましょう。
この「適正値」が目的によって「一定数を割らないようにする」のか「一定数を超えないようにする」のかが変わってきます。

在庫管理の基本は、入出庫のみ

どんな在庫管理手法においても共通しているのは、「今、何がどこに何個ある」かを把握できることです。
前提として、在庫は常に変動しています。
その原因は「出庫」すなわち販売などにより持ち出した分と、「入庫」すなわち補充です。

例えば、商品A,B,Cを100個ずつ仕入れて販売したとします。
初日にそれぞれ10,20,30個、翌日15,20,35個、3日目に15,15,35個売れたとします。
するとA=10+15+15=40個、B=(同様に)55個、C=(同様に)100個売れたことになります。
元々100個ずつあったわけですから、残りはそれぞれ60,45,0個となります。
Cはこれ以上売る在庫がないので、仕入れ発注を行い、到着したらその分を在庫として追加する…の繰り返しです。

あとは、拠点間移動や減耗などによる廃棄ロス分の考慮が必要になるケースがありますが、
いずれも入出庫の延長、即ち「増えるか減るか」で説明できます。

在庫管理システムが難しく感じる理由

そうはいっても、実際には「入庫がダンボール単位で出庫がケース単位」「入出庫の単位が相手先によりまちまち」
「商品入れ替えが激しすぎて、どこにあるのかいつも分からない」…のような特殊な事情が少しずつ生じます。
特殊な事情が少しずつ積み上がることで、それをどう反映すべきか、また他への影響がどう及ぶか?
といったことが分かりづらくなるのです。
特に、「どこに」については、格納する棚の構造や置き方にも依存します。
その為、情報システムだけで完結する話ではないことが多いのです。必要に応じて様々な調査を行います

在庫は必ず、他の業務に繋がる

ところで、そもそも何のために在庫しているのでしょうか?
「販売するため」「製造するための原材料として使うため」…のように、必ず次の工程があります。
倉庫業であっても、「単に預かっているだけで、出したいと言われるまで保管するだけ」というケースは少なく、
「預かったモノを、指定された単位で指定された相手に指定日時に届くように出荷する」ことが目的だったりします。
在庫管理を行う上で、「次の工程」を意識することが肝要です。

組み合わせ方次第で、こんな使い方も

例えば製造工場では、生産計画に基づいて製造が行われますが、何を作るかによって使う原材料や部材の在庫が減少していきます。
同じ原材料が複数の製品で使われることも、珍しく無いため、重要な原材料が不足すると、生産ラインが止まってしまいます。
かといって、大量にストックしておくと、会計上は資産計上になってしまいます。
そうなると金融機関から煙たがられる「不良資産」予備軍と見なされます。

つまり、発注~仕入れまでのリードタイムを考慮しつつ、在庫が払底する直前に補充されるようにする。
そうすると一番コストが抑えられることが多いので、情報システム化する場合はこうした方針を目指すのが一般的です。
とはいえ、輸入資材などでは発注してから仕入れまでに何ヶ月もかかることがあります。
その為、フォーキャスト(≒生産計画)を基に、先に発注する必要があるケースもあります。
このようなケースでは、フォーキャスト自体をシステム化の対象としましょう。
その上で、原材料によってはフォーキャストの数値を基に不足分の手当が行えるようにする必要があります。

こうして考えて見ると、在庫管理は意外と奥が深いのです。
在庫管理の基本的な考え方について説明いたしました。
次回はExcelで在庫管理をすることについてもう少し踏み込んでみようと思います。

Excelで在庫管理(2)Excelで管理するメリット/デメリット

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