道具としてのExcel活用

事例に学ぶ業務の標準化(1):経理部門の標準化例

「業務の標準化」とはどんなことか、具体例を通じて紹介します。

経理業務を標準化する

相手先にあわせた銀行口座を多数保有

取引先が多数に及ぶ場合、相手先に合わせて取引銀行を多数保持しているケースがあります。そうすることで、負担する振込手数料を倹約できるから、という理由が多い様です。
しかし、そのせいで、入金の確認のために全ての銀行口座の振り込み状況を確認しなければなりません。

多くのケースでは実際にATMに行って通帳を記入しますし、多少進んだところで各社各様のWeb画面で確認することになります。これでは、口座の数だけ、作業ルールが発生してしまいます。

 

銀行口座の標準化

例えば、我が社の例では、対外的な銀行口座を1つに絞っています。その銀行を選択した基準は、ネットで全て完結できる処にありました。

この方針に伴い、取引先によっては支払い手数料の負担を求められるケースが出てきましたが、複数の銀行口座を確認する手間と人的ミスのリスクを考えると、十二分におつりが来るものでした。

もっとも、公的機関などでは、「ネット銀行は銀行として認めない」方針のところもあり、そうしたケースのみ手作業で「ATMで振り込み確認を行い、定期的に通常使用口座に振り込む」運用としています。

 

得られたメリット

何にも増して、経理処理にかかる時間が圧倒的に減りました。いちいち記帳に行く必要もなければ、複数のWeb口座を(複数の手順で)確認しなくてよいのです。

当然、その後の会計ソフトへの連携も同じ手順でできますから、覚えるのも早くなります。このようにルールを単純化したおかげで、入出金業務は1時間もあれば引き継ぎができます。

さらに、副産物的に、お金の流れを短時間で把握できるようになりました。何しろ1つの口座を見ていれば、9割以上のお金の流れ(キャッシュフロー)が分かるのです。

 

別方式による対応例

銀行間のデータのやりとりは、全銀協手順と呼ばれる方式で行われているため、どの銀行でもこの方式のデータは(理屈の上では)作れます。

この「全銀協手順」形式でデータが落とせるようになっているのであれば、異なる銀行であっても同一のしくみで処理が可能です。

なお、この「全銀協手順」は、メインフレームと呼ばれる、パソコン以前の時代の産物のため、扱いが少々やっかいですが、一度自動処理できるしくみを作ってしまえば、短期で無くなる心配が無いという側面も持っています。

 

他分野への応用

取引先毎に提出する伝票様式が異なるため、個別に手作成するケースが少なくありません。

これは、システム化する場合は、元となるデータは1つの仮想的な伝票に統一し、これを出口の様式に転記する方式とすれば、爾後取引先が増減したときに転記先のみすげ替えてやればよいので、迅速に対応できるようになります。

例えば、卸や商社といった業態では、1つの商材を扱うのに数百以上の取引先がありますが、こうした「出口切替え方式」を取ることで、追加があった場合にすぐ対応できるようにしています。

要は、一度標準的な様式に変換すれば後続に連結できるようにしておけば、局所的な影響のみで対処できるのです。

 

大昔から標準化されていた経理業務

「経理作業」といえば、伝票を相手に人海戦術でこなすイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、仕訳において使用する勘定科目は決まっているので、誰がやっても同様の仕訳になるはずです。だからこそ、会計士などの第三者がどの企業の会計帳簿を見ても、同じように意味が把握できるのです。これは数百年前から工夫が積み重ねられた結果得られた「標準化」です。

このように、長い歴史の積み重ねで得られた教訓が標準化にあるわけですから、身の回りのルーティンワークにも標準化の可能性が見いだせそうです。