道具としてのExcel活用

業務改善のための、標準化入門:よくある勘違い

 

標準化とは(おさらい)

前回、標準化とは何かを、必要最小限で説明を試みました。

サマリーとしては「標準化の目的は、業務間の互換性をとる事」です。

標準化の考え方を取り入れることで作業が単純化され、同じ内容の再入力が無くなり、属人的要素が減ることからチェック業務そのものも無くせる、という話でした

システム開発にせよRPAによる自動化にせよ、こうした標準化を行わないと、大きな効果に繋がらないわけです。

 

業務改善のための「標準化」「互換性」、具体的にどうすればよいか

前回触れた「コンセントの形状」は目に見えるのでわかりやすいのですが、一般企業の業務における互換性というと、イメージしづらいかも知れません。

コンセントを「電気を授受する受け口」と捉えると、業務上のコンセント相当は「次の作業工程に必要な〇〇を授受する受け口」ということになります。

見積書を出したあと、請求書を作る、経理ソフトにデータを登録する、といった関係が、「次の作業工程」に必要な情報を渡す受け口を持っていることになるので、ここに互換性を持たせれば、標準化されたことになります。

具体的には、見積書のファイルをひと手間かけるだけで請求書にできるようにしたり、請求書のファイルをCSVで保存すると会計ソフトでそのまま読み込めるようにする・・・といった具合です。この程度であれば、ロボットやらクラウドサービスやらといった難しい話は一切不要で、手作業でも大きな効果が期待できそうです。

 

業務上の標準化、具体例

営業でも経理でも、全く新しい種類の仕事が発生し、どこからどうやって処理して良いか迷う、ということは滅多にありません。細部で異なっていても、おおよその流れは共通です。

このため、「エクセルでテンプレートを作って使い回そう」という発想が出てくるのですが、これだけだと同じ業務内でしかメリットを享受できません。

本当に標準化が威力を発揮するのは、それらのファイルの「二次利用」、即ち後続の業務でそのまま活用できるようにすることです。

 

先の、請求書を作る作業を想定すると、何もないところから請求は発生しないので、必ず何かを見ながら作っているはずです。大抵は、見積書があって、その最終版をを基に請求します。

そうなると、最初から請求時にそのまま使える様に見積業務を設計しておけば、わざわざ請求書を作り直す必要はありません。

何しろ、見積書であれ請求書であれ、含まれる情報は「相手先情報」「品名」「金額」など、ほぼ共通です。

これを手で打ち直しているところが余りに多く、「自動で転記して欲しい」という依頼が多いのですが、最初から見出しを切替えるだけにするなど共通で作っておけば「転記」そのものが無くせ、人的ミスも原理的に無くなります。

  • ※実際にはもう一工夫しておかないと多重請求が発生しますが、標準化をシンプルに説明するために単純化してあります

同様に、請求したら経理処理をしなければなりませんから、会計ソフトで処理できるデータとして出力すれば、経理の人が手入力する手間とミスをゼロにできるのです。

 

標準化によくある勘違い

ルールを1つにする事ではない

合議制、すなわち大勢で意志決定をするのが日本企業の特徴です。

建前としては、全員で納得して進めるのが「和」である、と言うことになりますが、現実的には声の大きい人の意見が通りやすくなり、「何でも標準化すれば良いというわけではない」という声の大きい人がいると、そこで全てが止まってしまいます。

もちろん、何でも標準化すれば良いわけではありませんが、当該業務が標準化に向いているかどうかの判断は必要です。この時、少なからぬ人が、標準化=全てを1種類にする、と思い込んでいるようです。

実際には、先のコンセントの例でも、コンセントの形状(刃受けと言います)は1種類ではありません。家庭用でも大型のエアコン等、刃受けが縦に並ぶのではなく、横に並んでいるのを見かけます。

通常家庭用では100Vの電源が来ていますが、大出力エアコンのように200Vで給電されるところで間違って一般の家電製品を差込んでしまうと、火災・焼失・故障などにつながりかねません。安全のため、原理的に「間違えようとしても間違えられない」形状に標準化しているのです。

このように、ルールは目的(この場合は事故防止)に応じて複数存在してよいのです。

この発想をシステム開発に応用すると、「金額欄に間違って文字を入力できないようにする」「フリガナ欄入力時は自動的にIMEをカタカナに切り替える」といった実装につながります(Excelでも設定できます)。

 

業務手順を決める事ではない

次によくある勘違いが、「標準化=業務手順を決めて、その通りにできるようにする」です。「業務の標準化」=「ルールを作ってその通りに動けるようにすること」と断言している方がいますが、順序が逆です。標準化されていないルールをマニュアル化しても、現場が混乱するばかりです。

ISOに申請するからという理由で、現状の手順を図示(視覚化)してマニュアルにし、その通り再現している企業を何社も見かけましたが、本来ISOは「国際標準化機構」という名の通り、標準化が前提となっているわけですから、標準化せずに業務手順を視覚化しても、全く無意味です。

確かに手順を決めておけばRPAなど自動化ツールに乗せやすくなりますが、その手順が効率的でなければむしろ逆効果です。

従って、順番としては互換性を目的とした標準化を行い、その上で標準手順化(≠標準化)を作成することになります。

 

互換性のメリット(まとめ)

異なる業務間で情報の再利用ができる

見積と請求のように同一部門で異なるタイミングで行う業務間での互換性が取れるだけでなく、営業と経理のような異なる部署でさえ互換性による再入力を減らせられます。

これにより、短時間でより多くの処理ができるだけでなく、原理的に入力ミスがなくなるので、チェック業務を無くすことにつながります。

システム開発やRPAで自動化するのと、当該業務そのものを無くせるのとではどちらが効率化か、一目瞭然でしょう。

 

属人化を排除できる

「ベテランのxxさんでなくても、新人にわずかなトレーニングをするだけで、同等の成果を出せる」のが、究極の属人化排除です。

昨今、「業務のJOB型(ジョブがた)」が喧伝されていますが、仕事の内容が今のまままで各業務が標準化されていないと、実現できません。

属人化が排除できれば、(良くも悪くも)ベテラン社員に依存せず、汎用的に誰でも同じように仕事ができるようになります(人員間の互換)。

 

 

まずは標準化に関する正しい認識を

というわけで、業務の効率化を図るためには、各業務を標準化することで単純化し、情報の互換性を持たせることで「データの再登録」を原理的に0にするのが最善です。

ルールを無理矢理1つにするとか、ワークフロー図に起こせば良いといった誤解を基に反対意見も出るかと思いますが、まずは「標準化」について正しく認識した上で、小さな1事例を作って効果を確認し、その後徐々に広げてはどうでしょうか?

ちなみに我が社では、ものぐさな社長の影響で、一度入力したデータは徹底的に”リサイクル”し、再度手入力することは殆どありません。

わずかに、銀行振り込み用の画面がWebな(かつ件数も少ない)ので、手で入れ直していますが、このような対外的な要素はコントロールができないので、除外することになります。

 

20年以上、Excelを使った標準化を1600件以上実施してきた経験を基に、標準化策定のお手伝いも致しますので、迷ったら匿名でご相談ください。