道具としてのExcel活用
いちばんやさしい(そして短い)、標準化入門
業務改善運動が成功しない理由、それは「標準化」にあった
私どもは仕事の特性上、「自動化したい」「業務効率を改善したい」といった要望を、年間200件近く受けていることもあり、普遍的に多くの企業が抱えている「悩み」がよく分かります。
大半が、「これから効率化するにあたり、どうしよう」ではなく、「散々試してみたがうまくいかない」「一度はうまくいったのに、別の問題が健在化した」といったテーマが多いのです。
「うちの会社はなぜうまくいかないのか?」と聞かれるのですが、「うちの会社」に限らず、それこそ日本国中で多くの企業が同じテーマで悩んでいます。
これまでも、派遣やアウトソーシング、自動化の為の機器類やクラウドサービスを試し、最近ではRPAやらAIやらに手を出してみたものの、目に見えた効果が出ない・・・と言う声が圧倒的です。
導入した機器類やサービスは様々ですが、うまくいかない最大の理由は、自動化以前に「業務の標準化」が進んでいないからです。
標準化・・・あまり聞いたことがないか、あっても堅苦しい印象しか無いかも知れません。
業務改善の大前提、「標準化」とは
標準化を一言でいえば、「互換性の確保」です。
「業務改善で互換性??」・・・と分かりづらいかもしれないので、身近な例を挙げてみましょう。
効率化手段としてパソコンやら複合機やらを導入した企業も多いと思いますが、いずれも同じ「コンセント」から電源を確保できます。
当たり前のことですが、よくよく考えて見れば、不思議です。A社のパソコンも、B社のプリンターも、C社の複合機も、D社の冷蔵庫も・・・皆同じコンセントから給電できるのです。
メーカーによってコンセントの形状がばらばらだと、その都度コンセントの設置工事から始めなくてはいけませんし、コンセントの機材も個別に小ロットで作らざるを得ないため、割高になります。
さらに長期間使っていると新製品が登場し、買い換えに伴いコンセントの工事から始めなければならなくなります。
製造側も、毎回受電装置から設計し直さなくてはなりません。
かといって、最初に作ったA社に後続企業が合わせてくるかというと、知的財産権やらプライドやらが複雑にからんで、大抵そうはなりません(往年のβ vs VHS戦争がこの構図でした)。
しかし、コンセントの形状は事故につながる危険もあるためJISで規格化されており、これに合わせるメリットが独自仕様にするメリットをはるかに上回っているからこそ、どのメーカーもこれに合わせています。
これこそが、身近な標準化の例です。
標準化でコストダウンも
「給電する」という目的のために、供給する電圧やコンセントの形状を規格化しておくことで、製造側では一度作れば他製品に使い回しができ、何なら他社から購入しても安く調達でき、品質も安定している、と言うメリットが享受でき、利用者側も製造社に依らず同じ給電方法が使い回せるのです。
同様に、電球のソケット(口金)部分も、E26、E17のような規格があり、エジソンが発明して以来今に至るまで互換性を保てているのです(E26のEは、エジソンのEだそうです)。
エジソンの時代の器具に最新のLED電球が使えるなんて、考えてみればすごい事です。
これも標準化のおかげです。
業務に活用するには
日常業務においては、必ず何らかの「情報」を基に、「加工」「付加」を行って次の工程につなぎます。
例えば、請求書を出すには「見積時の金額情報」を基に「請求書」という印刷物を作成して送付し、この「請求書情報」を基に、経理部門が仕訳登録を行っています。
このように、「給電」の代わりに「情報」で互換性が取れれば、手で再入力する必要がなくなり、「転記を自動化する」という発想がなくなります。
さらに、人が転記をしないので、チェック業務も不要となります。
請求情報にしても、基をたどれば見積もり情報であり、途中加工されることがあっても使いまわしできるため、これらの内部構造を共通にしておけば、同様の表現が可能です。
欧米の真似ではなく、実態を踏まえることが重要
標準化は、「決められたことを守る」のではなく、目的を明確にしてルール化することが肝要です。先に例示したコンセントにしても、200Vの欧米の標準化をそのまま100Vの我が国に適用しても意味がないので、解釈を変えています。そもそも、”コンセント”という言葉自体、日本語です。
業務の自動化に取り組む前に、まずは現在の業務の標準化について考えてみてはどうでしょうか?