道具としてのExcel活用

DXが失敗する理由トップ5と、ツール依存の落とし穴

筆者は「DX」という言葉・概念が生まれるよりはるか以前(Windows3.1の時代)より、本来のDXを実践してきた経験があります。今はこれを生業として、2000社以上の実績を積んできましたが、先日ある展示会で多くの人の悩みを聞く中で、うまく行かないケースの共通項に気づきました。

DX推進共通の悩みとは?

「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しているが、思うような成果が出ない…」「業務ごとにばらばらなツールで同期が取れない...」展示会で多くの方からこうした状況を伺いましたが、そんな状態は寧ろ普通です。うまく行かないのは貴方の会社だけではなく、実は成功事例とされている中でも「こんなはずでは...」が生じています。

多くの企業がDXを導入する中で、目的が不明確だったり、ツールに頼りすぎた結果、期待した効果が得られないという問題に直面しています。経済産業省の報告でも、DX失敗の原因としてこれらが挙げられており、同じ悩みを抱える企業は少なくありません。
この記事では、DXが失敗する原因と、成功させるための具体的なポイントをわかりやすく解説します。DXを成功させる鍵は、ツールではなく、推進者自身が現場のニーズ(目的)を理解し、目的に沿った改革を進めることにあります。
最後までお読みいただくことで、**「どうすればDXを成功させられるのか」**が見えてくるはずです。それでは、DX失敗のよくある理由について見ていきましょう。

DXが必ず失敗する5つの理由

DX推進が失敗する主な原因には、以下のようなものがあります。これらは多くの企業で当然視された”美徳”であり、これが正しいとされる価値観であるため、まずは現実を直視することが肝要です。

1. ツールありきで進める

「最新のツールを導入すれば解決する」と考える企業は少なくありません。しかし、ツール自体はあくまで手段に過ぎず、ツールを導入するだけでは業務改善は実現しません。たとえば、CRMシステムを導入しても、現場の営業担当者がその使い方を理解していなければ、結局もとのやり方が復活し、新旧2つのやり方をしなければならないケースが、少なくありません。

2. 目的が不明確

「DXを進めなければ」という意識だけで、具体的なゴールが設定されていない場合、プロジェクト全体が迷走します。たとえば、「業務の効率化」という曖昧な目標だけを掲げても、何をどう変えるべきかが見えず、現場が混乱することになります。
展示会でも「生産ラインの見える化」が目的だと言う人が複数名いましたが、見える様にしてどうしたいかの問いに答えられる人は皆無でした。これも、見える化が目的になっている典型例です。
目的というのは、「生産計画から将来使用する生産財を把握することで、在庫の極小化を図る」「納期のデッドラインを把握できるようにすることで、特急対応の受け入れか日を瞬時に把握する」といった、具体的な効果が見えてこなければ、意味がありません。

3. 現場の意見を取り入れない

経営層がトップダウンで進めるだけでは、現場との間にギャップが生じます。
たとえば、ある金属製品工場では、”生産管理のDX”目的でクラウドサービスを全面的に導入しましたが、使いづらいと大不評で、誰も使わなくなってしまったそうです。現場の方にヒアリングしてみると、自分で作ったExcelの方が早いし、微調整もできるから、とごもっともな回答が得られました。これなど、わざわざ高額なクラウドサービスを使う前に、まず現場の人を巻き込んで、Excelでできる事を探った方が、強力を得られたであろう典型例です。

4. DXの意味をはき違えている

DXの目的を、業務効率化だと思っていませんか?
DXの目的は、企業がビジネス環境の変化に対応し、競争力を高めることです。転記を自動化したところで、競争力が高まらなければ、単なる効率化に過ぎません。
目的が効率化なのであれば、今すぐDXをやめましょう。

5.事情がわからない人だけで推進する

DXが「デジタル」であるゆえんは、旧態化したしくみの代替として、新しいデジタルテクノロジーの導入が含まれるためです。
「新しいテクノロジー」そのものを理解していないと、表層的な宣伝文句に踊らされ、「こんなはずでは」という事態を招きやすくなります。
たとえば、よくある「転記を自動化」ですが、今ある旧態依然とした業務プロセスを固定化するだけの行為であり、例外が吸収できなくなるデメリットしかありません。本来は、転記を無くすにはどうするか、を考えるべきなのです。
社内に理解できる人がいなければ、何人集まって何年かかっても、結論は出せません。実績のある外部人材に依存した方が、短期・低コストで対応できます。

 

失敗を回避するために重要なこと

これらの失敗を防ぐには、まず目的を明確にし、現場の課題や目標を中心に据えることが重要です。ツールは手段であり、目的にはなり得ません。
たとえば、現場から「業務時間が長い」という声が上がっているなら、短絡的に「作業を自動化しよう」ではなく、具体的にどのプロセスを削減できるのかを分析し、それに合ったツールやソリューションを選ぶべきです。
次に、ツールに頼ることのデメリットについて詳しく見ていきます。

 

ツール依存のデメリットとは?

DX推進において、とかく「はじめにツールありき」となりがちですが、ツールに依存することは、以下のようなデメリットを引き起こします。

1. ツール導入が目的化し、効果が得られない

「DX=ツール導入」と誤解されることが多いですが、これは大きな落とし穴です。
たとえば、ピザの出前を短時間化する目的でダンプカーを導入しても、逆効果でしかありません。同様に、高価なERPシステムを導入しても、目的や現場のニーズと合致していなければ、投資に見合った効果を得ることができません。

2. 現場にしわ寄せが行く

新たなツールを導入するということは、新たな操作方法を習得する必要が生じ、現場の従業員にとって大きな負担となります。
特に、例外事象が発生した際の操作手順が複雑だったり、そもそもできないといったケースもあり、業務効率を低下させるだけでなく、従業員の離反に繋がることさえあります。

3. 維持費用がかさむ

ツールの導入後にも、ライセンス料やメンテナンス費用、カスタマイズ費用などが継続的に発生します。特に、「月々○千円から」のうたい文句で導入したものの、有効な機能をオプションで追加していくと、すぐに「月々○万円」の大台に乗ってしまいます。
向こう○年でいくらかかるか、それを回収できる効果が得られるかの検証が重要です。

4. 属人化・属ツール化が進む

ツールに依存しすぎると、それを操作できる従業員に属人化しがちです。その人が退職したら、誰も手が出せない状況は避けるべきです。
また、当該ツールが値上げしたり、他のツールの機能・使い勝手が向上した場合でも、乗り換えが容易にできません。
まして、サービス提供会社が倒産したり、他に買収されたりすると、機能そのものが無くなってしまうかもしれません。
将来、他の処理系への移行を念頭に、何ができるか検証しておくべきです。

 

成功するためのDX推進のポイント

DXを成功に導くには、次の3つのステップが参考になるでしょう。

  1. 目的の具体化(業務改善の目的と成果指標を定める)
  2. 現場の声を聞く(現場の負担を減らすツール選び)
  3. 段階的な改革(小さな成功体験を積み重ねる)

1. 目的を明確に設定する

「DXを通じて何を実現したいのか」を明確にすることが最初のステップです。
ここで重要なのは、得られた効果が、どのように競争力の向上に繋がるかです。
たとえば、「在庫量を最適化する」なら、財務的な体質改善が図られることから、新規の投資などがやりやすくなります。また、「急な短納期への対応」は、高単価で収益に貢献するだけでなく、技術力・サービス力をアピールし、リピート需要につなげる絶好のチャンスとなります。
なお「売上を年間5%向上させる」といった目標は、競争力の向上よる「結果」であり、これ自体が目的かしてしまうと、「赤字でも売ってしまえ」ということに繋がります。

2. 現場の課題を把握する

現場で何が課題になっているのかを徹底的に洗い出しましょう。たとえば、どの業務が非効率なのか、どこでボトルネックが生じているのかを把握することが重要です。このプロセスには現場の声をしっかり反映させます。

3. 小規模から始め、継続する

いきなり全社でDXを推進するのではなく、まずは小規模な部署やプロジェクトで試行しましょう。このアプローチは、失敗リスクを低減し、成功事例を他部署へ展開する際にも役立ちます。
DXは一度で完了するものではなく、継続的な取り組みながら、範囲を広げて行くのがよいでしょう。
また、小規模でもよいので、短期間で一定の成果を出せると、現場のやる気が目に見えて変わってきます。逆に効果がでるまで何年もかかるようだと、諦めて別のことをやろうと言い出す人が増えてきます。
高い山に登る目標自体は否定しませんが、頂上まで行かなければ成果が得られないのではなく、1合目・2合目・・・といったタイミングで、成果が確認できればよいのです。

 

 

当社がお手伝いできること

DXは、単なるツールの導入ではなく、競争力を高めることが目的です。
成功の鍵は、目的を具体化し、現場の課題にフォーカスすることです。ツールに頼りすぎることでかえって非効率になるリスクもあります。
これらを「デジタル技術」で支援することで、効率化も図ろうとするのがDXですから、デジタル技術の使い方に長けた人材が必要です。
社内に人材がいない場合は、「技術に詳しい人」ではなく、「競争力を高めた経験の多い人」を頼るのがよいでしょう。

経験者が身近にいない時は、過去2000件以上の実績を持つ当社の経験が、きっと役に立てると思います。

相談は無料で匿名でも受付けていますので、お気軽にどうぞ。