道具としてのExcel活用
Excelをクラウド化する『Excel for the web』・・・ GoogleSpredsheetとの違いなど
Excelは、「スプレッドシート」ソフトの1つ
行と列で表(マトリックス)になっていて、関数と呼ばれる式を入れると合計などを自動で計算してくれる、中学生でも使えるノンコードツール・・・こうしたジャンルのソフトウェアを、スプレッドシートと言います。Excelは今あるスプレッドシートの中では最も歴史が古く、1986年から存続している、いわばスプレッドシートの代表格です。このため、スプレッドシートそのものを「Excel」を呼ぶこともあり、「Googleのエクセル」のような言い方をする人もいるくらいです。
このように、見た目も機能も似通ったスプレッドシートのソフトウェア(サービス)ですが、意外と多くのバリエーションがあり、微妙に互換製がなかったりします。
実は、Excelでも複数種類があり、互換製も低い
Excelは、Microsoft社が開発・提供しているソフトウェア/サービスですが、実は様々なバージョンが混在しています。
大きく分けると、コンピュータにインストールして使うExcel(これが、本来のExcel)と、見た目や機能を近づけてブラウザで利用できるオンライン版Excelがあります。
インストール版Excelには、Excel2019とか2021、2024といった、デビュー時期によるバージョンによる差違の他、Excel365と呼ばれるバージョンが常に最新化できるものがあります。更に、通常インストール版(これが、本来のExcel)と、LTSCと呼ばれる企業向けの特別なインストール版があり、機能に若干の違いがあります。
オンライン版Excel(Excel for the web:旧 Excel Online)は、無料で使えるバージョンの他、Teamsから開いて利用する有償版Excel Onlineがあり、それぞれ機能等が異なる他、本来のExcelとも全く機能が異なります。
過去には、スマホ用のPocket Excelのようなものもあり、互換性はほぼなく、寧ろExcel2003あたりの旧いコンパクトなバージョンの方が、機能は充実していたくらいです。
Excelは元々Apple社のMacintoshコンピュータ向けに作られたソフトウェアですが、一時期マクロの搭載を止めたこともあるくらいで、Windows版との互換性は高くありません。
いずれも「Excel」という名称が付いているので、当然互換性があるとの期待を持ってしまいがちですが、全く互換のないものもあるので、注意が必要です。
Excel互換を謳う類似サービスとの違い
スプレッドシートには、Excel以外にも様々なサービスが提供されており、多くが無償、もしくは極めて低廉な価格で提供されています。かつてはLotus 1-2-3がライバルの筆頭でしたが、最近ではGoogle Spredsheetが有名です。
Google Spredsheetは、基本的な関数でExcelとの互換性がある他、独自に拡張した関数を持っており、他のGoogleサービスとの連携が容易、と言うのがウリの1つです。Excelのマクロに相当するスクリプト言語も搭載しており、他のGoogleのクラウドサービスとの連携もできるなど、日常的な業務で使うには十分な機能があります。こうした機能が無償でも使えるのは大きな魅力で、スタートアップ企業などを中心に、利用者が増えています。Google SpredsheetからExcelファイル形式に実体化してダウンロードすることも可能ですが、たまに構成が壊れてしまったり、互換性がない関数はエラー表示になるなど、相互の環境で同様に利用するのは難しそうです。
WPS Spreadsheetsは、元々「安く導入できるExcel代替ソフト」として売り込んでいました。本校執筆時点(2024年3月)で4000円台で入手でき、しかもWordとPowerpoint相当のソフトウェアもついています。買取型で毎月の支払いも不要ですから、確かに安く、過去に分析した際の手応えとしては、一般的なオフィスで軽度に利用する分には十分な機能を有しており、関数レベルでのExcelとの互換性も高かったです。一方、マクロで何か定義しておくと、互換性は高いとは言いがたく、少々複雑な条件分岐やファイル操作が入っていると、エラーになっていました。(最新バージョンでの評価ではなく、相当昔のバージョンでの感想ですので、念のため)
同じ「本来のExcel」の中でも、本家Mac版Excel(元々ExcelはMacintoshコンピュータのキラーコンテンツでした)は、関数レベルではWindows版と高い互換性が保証されていますが、一時期マクロ機能そのものを排除したくらいなので、マクロ(VBA)の互換性はほぼありません。特にファイル操作を伴う場合、OSによるファイル操作方法の違いをもろに食らう(例:ドライブレターという発想がない)ため、記述法そのものを変える必要が生じます。
名前が似ているオンライン版Excel(Excel for the web)は、保護設定や入力支援などの機能に大きな違いがあり、複数の社員が使う業務システムを実装しようとすると、戸惑います。互換性はあるものの、Install型とは異なるサービスとしてとらえて置いた方が無難でしょう(あくまで執筆時点での話です)。詳細は後述しますが、クラウド空間で動作させることに特化した、新世代のExcelということになりそうです。
マクロ(VBA)が使えるのは、基本的にWindowsにInstallしたExcel
色々バージョンがありすぎて(しかも頻繁に名称がかわって)混乱しそうです。
Microsoftの公式ページに「Office は Microsoft 365 になりました」とあるように、これらサービスの名称は頻繁に変更されるので、個別に全てのバージョンを追うことは事実上無理だと思った方がよさそうです。
とりあえず、このページを読んで戴いている方は「Excelを高度に活用して業務に活用しよう」という方針だと思いますので、マクロ(VBA)が使えるかどうか、と言う視点で見ておけば十分でしょう。すなわち、Windows版にインストールした、Excel365、Excel2019/2021のような版であれば、VBAマクロが使えます。
なお、オンライン版でもVBAは使えますが、使える範囲が限定される(詳細は後述)のと、独自のマクロ環境があってそちらが今後主となる見込みのため、互換性は限定的です。どちらが良いか悪いかと言う話では無く、Web環境(クラウド上)での利用を想定した仕様となっているため、「ファイル」という概念が無いなど、従前とは大きな違いがあります。
普通のExcelファイルを、クラウド的に活用する応用
最近は、「脱Excelで、クラウドを活用」することがDXだとする風潮が流行っているようです。
ところで、意外と知られていませんが、普段使いのExcelファイルを、クラウドで共有したり、クラウドサービスに接続することが可能です。つまり、世間で言うところの「DX化」が今使っているExcelでできてしまうのです。
もう少しわかりやすく言えば、Google Spredsheetsと同様の動きが、今使っているExcelファイルでできるようになります。
早速やってみましょう。
いま、普通にExcelのファイルを用意します。普通に、というのは、フォルダにExcelファイルを保存する、という意味です。
これを、Teamsで作ったドキュメント領域にUploadします。すると、複数名で同時に編集ができるようになります。
試しに、他の人にブラウザで開いて貰います。赤○で囲ったところから「ブラウザで開く」を選ぶと、webブラウザで先ほどのExcelが開きます。(「アプリで開く」を選ぶと、普段使っているExcelから直接開きます)
試しに、No.1011の商品名称を変更してみます。これを先ほどのコンピュータから見てみると、このようになります。
画像では少々見づらいのですが、P18とV17の2箇所にカーソルがあります。このように同時に複数名がファイルを開いて編集することができるようになります。しかも、Windows版Excelがなくても、ブラウザだけで利用できるようになります。マクロ(VBA)もちゃんと機能しますから、Google SpredsheetsとExcelのいいとこどり、のような印象です。
これだけだと、今のExcelのままで良さそうですが、オンライン版ならではの特長として、PowerAutomateやPowerAppsのようなクラウドサービスにも接続ができるようになり、「スマホから営業報告を登録したら、Excelに自動的に反映される」といった動きが作れるようになります。
このように、最近のExcelは、クラウドアプリにもなっていたのです。
結局、Excel for the webは、Install版Excelと何が違う?
このように、ほぼ同じようなことができる印象がありますが、細かい差違はあります。
まず、クラウド上(Teams=Sharepoint)では、ファイルという概念が無くなりますから、他のファイルへの外部リンクに制限が生じます。当然、マクロを使って複数ファイルの内容を纏めて取り込んだり、転記したりといったことには向いていません。
また、関数や式を自動計算を手動化するといった細かい設定はできませんし、ショートカットも必要最小限のものしか使えません。日頃合計行をショートカットで設定しているレベルの人には、しんどいかもしれません。
要するに、何か細かい設定をするにはInstall版のExcelでないとできないことが多く、利用するだけならOnline版のExcelでも大抵のシーンであれば十分、と言ったところでしょうか。
クラウド版、Excel for the webをフル活用したシステム化のご相談なら...
思えば、当社でSharepointに触れたのは2009年のリーマンショックのころでした。当時は、Sharepoint自体がクラウド対応しておらず、専ら社内で共有するだけで、しかもExcel本来の機能の殆どが使えない、と言うものでした。
その頃から、Excel単体だけでなく、クラウド環境での活用にも取り組んでおり、当時からクラウドデータベースのAzure(アジュール)とExcelを組み合わせた実装を数多く手がけるなど、少なからぬExcel+クラウドの経験もあります。
もちろん、クラウドを活用するのは手段であって目的ではありませんが、Excelだからクラウドは使えないといった前提なく様々な利用方法をご提案できますので、お手軽に根本的な業務改善を検討したいといった課題をお持ちであれば、お気軽にご相談下さい。