お客様の声
社会保険労務士法人伊藤人事労務研究所は、社会保険関連の書類作成などの一般的な社労士業務の他、人事制度や就業規則などのコンサルティングを手がける社会保険労務士法人です。
今回のプロジェクトは、人事制度のノウハウがない零細・中小企業を対象に、必要最小限の制度として等号級と給与テーブルの概念を普及させたいという思いから、安価で簡単に使えるソフトウェアを作ろうという試みからスタートしています。
とはいえ、言うは易く行うは難し・・・これまでに類のない試みのため、どうやって実現するか手探りでした。
対象となった業務の概要について、ざっくりとご説明戴けませんか?
通常業務として、大企業から中小企業のお客様に対して人事制度の構築や見直しをアドバイスしていますが、今回対象としたのは、主にノウハウ不足の中小零細企業向けに短期間で人事制度、たとえば等級制度、評価制度、給与制度を構築する業務となります。
人事制度の制定といえば、本来高度な知見を持った社労士などの専門家が行うコンサルティング業務と言えそうですが、これをノウハウが無い当事者自身に自ら構築していただこうとしたのは、何か”戦略”があったのでしょうか。
たしかに、本来人事制度構築のためには専門的な知見が必要となりますので、外部の専門家による長期間のコンサルティングが必要となります。そのため、それなりの費用と長期間の検討が必要となり、一定規模以上の組織であることが前提となってしまいます。
一方、数の上では多くを占める中小零細企業のお客様にとっては、こうした制約が足枷となり、人事制度が社員の成長や定着率の向上に不可欠な制度であるにもかかわらず、人事制度の構築や見直しを躊躇する理由となっていました。
こうした背景から、当事務所では中小零細企業の人事制度導入ニーズに応えるべく、中小零細企業が自ら作成できる、簡易な人事制度導入ツールを作ろうと決断したのです。
この簡易なというのは、わかりやすさを追及するという意味です。人事制度のポイントを限定しいくつかの簡単な設定をするだけで人事制度が構築、運用できるツール作成を目指しました。
現状、給与テーブルの作成支援機能は、クラウドサービスやパッケージソフトなどの選択肢もありそうですが、敢えてExcelによる貴社オリジナルシステム化を選択した理由をお聞かせください。
中小・零細企業の実態として、インターネットへの接続設定や、インストール時の条件確認など、大きな企業では当たり前にできるところで引っかかることが多いことや、バージョンアップの時に対応できないことが予想されたため、一方的に仕様が変わるクラウドサービスなどは適していないと考えました。
それでは、誰でも使える敷居の低いツールは何かということで社内で色々検討した結果、Excelなら誰だって使っているだろうという事になりました。
それに、Excelなら社内で作れるはずという思惑もあり、実際基本的な構造については社内で作ってみたのですが、設定できる人数や等級の入力に制約があったため、汎用的に使える様にしようとして行き詰まってしまいました。
扱いが平易なExcelをプラットフォームに選択したのに、そのまま社内で製作しなかったのは何故でしょうか。
汎用的に使える様にするため、関数の設定などを色々見直して見たのですが、弊社の中でExcelの活用について高度な専門的知見を持つ者が居なかったことに加え、今から学習するにしても本業が多忙になったため時間が取れないなど、限界を感じたためです。
結果として、今回完成したシステムは、一言でいうとどのような特徴をもったものですか
コンピュータ操作に不慣れで、人事・労務関連の制度の整備が行き届いていない中小零細企業に向けて、簡単な操作で等級制度、評価制度、給与制度などの人事制度を導入できるようになっています。
既存のソフトやサービスのような充実した機能を用意するのではなく、敢えて専門家の視点から必要なポイントを絞ったことが特徴です。
複雑な機能や設定が無いことで、まずは導入のハードルを下げ、中小零細企業に人事制度を根付かせることを目的としました。
当初の構想に対して、Excelだからあきらめた点や、逆により拡張できた点などがあれば、教えて下さい。
全体的にシステムの品質には満足しています。
一方、今後の課題としては、給与テーブルについて当該職種の最低額と最高額を指定するだけで自動計算で作成される機能を用意したのですが、等級の上限給与が一つ上の等級の下限給与と一致する「接続型」と呼ばれる種類に限定されてしまっている点があります。
「重複型」や「階差型」など、お客様のニーズに合わせたテーブルが自動作成できれば良いなと考えています。
現在この課題に対しては、利用者が設定した給与テーブルを使用できる機能があります。接続型でない給与テーブルをご希望のお客様に対し、弊社が給与テーブルの作成をお手伝いするきっかけにもできるこの機能は、仕様検討段階に提案を受けて採用したものです。
今回のシステム化にあたって、苦労されたのはどのような点ですか
Excel機能でできること/できないことの理解が充分ではなかったため、どこまで機能として盛り込むかを決めるまでに、想定を超えて時間がかかってしまいました。
また、当初は時間の問題、コストの問題で人事制度の中でも等級制度と給与制度にのみに限定した制度構築を行っていましたが、一旦出来上がってみると想定していた以上のものができてきたので、やりたいことが膨らんでしまいました。
そこで、更に評価制度の追加と昇給、昇格まで行えるように・・・と、人事制度としての完成度合いが高まり、結果的に完成までに時間を要しました。
今回システム化したことで、何か効果が出ていますか?
まず社内で試用して見たのですが、利用した人達からはかなりの高評価でした。
続いて、試験的に何社かにご案内したのですが、エクセルを利用したシステムなので操作方法が分かりやすい、人事制度構築のための全体的な流れが見える、導入後の人事評価や昇給の運用までフォローされているので使えるシステムになっていると、高評価を戴いています。
このシステムは制度を平易に表現しているので教材としても使いやすく、今後は社内人事制度研修への活用も考えており、もともと、中小零細企業は当事務所のターゲット市場ではなかったのですが、このシステムができたことで、新しいマーケットの開拓展望が開けました。