道具としてのExcel活用
会計ソフトに手入力不要
Excelデータを直接会計データに変換すれば、部門間で自動化実現
多くの人が勘違い、『会計ソフトは手入力前提』
ご相談の概要
年に数件は必ずあると言っても良い「頻出テーマ」の一つに、「会計ソフトに仕訳を入れなおす」業務の煩わしさがあります。
単に「面倒」なレベルであれば、精神論でも対応できるのですが、確率論的に人的ミスが起こり得る状況である以上、人が行う要素は極力減らすべきでしょう。
よく「請求書を発行したら、それを見て経理課の人が会計ソフトに打ち直すので、そこは自動化しなくてよい(営業部門には関係ない)」といわれるのですが、あと少し機能を入れるだけで、経理の人が手入力~見直しの苦労から解放され、ミスが原理的に0になるのです。
「会計ソフトや社内システムは、エクセルとは別」という思い込み
こうした相談の前提にあるのが、会計ソフトや社内システムはExcelではないので、手入力し直さなければならない」という思い込みです。
慣れないと発想として出てきづらいのでしょうが、デジタルデータの良いところは、2次加工・3次加工・・・をしても情報が劣化しない点にあります。つまり、ちょっと形式を変換してやれば(列を入れ替える等)、そのまま他の処理系(システム)で利用できるのです。
則ち、Excelも社内システムも会計ソフトも・・・全て同じ「デジタル処理系」ですから、データさえ受け渡してやれば、入れなおす必要はないのです。
いわゆる「データコンバート」と呼ばれる処理が必要ですが、簡単なものであれば、列の見出し名称を変えて、並び順を変えれば出来上がり、ということになります。
データコンバート(変換)機能をExcelで行うメリット
そもそも手でやればよくないか?
先にご紹介したような、「見出し名を変えて、並び順を変える」だけであれば、手作業で全く問題ありません。
Sheet1に張り付けた内容を、Sheet2で参照先を変えながら並び順を変えるだけで、立派な変換ツール(コンバーター)のでき上がりです。初心者でも、簡単にできます。
とはいえ、実際には
- 複数行を束ねて1行にする必要がある
- ある条件の時だけ編集ルールが変わるケースがある
- 1列の内容を複数列に分割が必要(住所を分割する場合等)
・・・といったケースが多く、こうなると手作業でやるには少々荷が重そうです。それでも、ルール数が限られていれば、まだ初心者にもできそうです。
それに、手で入れなおすのに比べれば、人的ミスが介在する可能性を、圧倒的に減らせます。
マクロ(VBA)を使えば、後続業務の自動化も容易
実は、マクロを使うことで、複数行を1行にまとめたり、自動的に相手先システム(ソフト)の仕訳名や仕訳コードに置き換えるといった処理が、比較的容易に行えます。
一度こうした仕組みにしてしまえば、勘定科目の追加/変更や、新商品の対応も、シート上の設定を変更するだけで対応できるようになります。
しかも、特例で1取引だけ値引き率を後から変更したい・・・といった場合に、普段のExcel操作(セルの数値を書き換える)だけで、初心者にも容易に使えるメリットがあります。
更に、部署をまたいでも、Excelならば共通で使われているため、一方のデータを他方で活用することができます。
例えば、見積もりから請求書作成までをマクロで自動化したら、そのまま請求書発行タイミングで売掛金の仕訳データを作成し、会計ソフトに食わせる・・・といった自動化が実現できます。
DX=自動化ではない
DXは省力化、という思い込み?
昨今、DXという言葉がはやっています。
「デジタルトランスフォーメーション」のことだそうですが、略語にすらなっていないこともあり、かなり難解です(3年以内に死語になるとにらんでいます)。
「ITを活用して組織や業務そのものを変革し、競争優位を確立すること」なんだそうですが、何にせよ、ITは手段であり目的は競争優位の確立です。
競争優位とは、同じ市場を狙っている競合他社に対して優位に立つことを意味しますから、例えば「他社より圧倒的に安く提供する」「他社より圧倒的に早く提供する」「他社に真似のできない高機能を提供する」・・・といった、自社ならではの強みを発揮させることが重要です。
先の例のように、請求書を自動で作成しただけでは、何ら競合他社より自社が優位になることはありませんが、経理の業務と結合することで「請求即仕訳登録→取引先別の債権をリアルタイムで把握」が可能になり、回りまわって弾力的な値引き率の設定につなげることもできるのです。
ExcelでDXを実現
DXというと、何か特別なしくみが要ると思われている節がありますが、使いこなせないような特別な道具では「ITの活用」ができないので、本末転倒です。
ちょっと使い方を工夫するだけで、Excelでも「見積書提出期間が3日→1時間になった」「顧客の目の前でシミュレーションしながら営業活動できるようになった」「間違いチェックのための残業が0になった」・・・実例がいくらでもあります。
改めて、DXとの親和性が高い、Excelの可能性を見直してみてはどうでしょうか?