道具としてのExcel活用

「Excelを卒業して、○○サービスへ」の本当の意味

10年以上前からある「今更エクセル?もう古い」的表現

サーバと同じことができないExcelは、「機能限定サーバ」?

もはやExcelを使っているのは古いと言わんばかりに、やれ新型クラウドサービスだの、新しいアプリケーションだの、多くの情報が溢れています。

こうした宣伝の前提は、全てのコンピュータツールはサーバと同様の性能であるべきで、速度が遅かったり機能が限定されていると、下位と見なすことです。

この種の宣伝情報ばかり見ていると、時代に取り残されそうな気がしてくるのも確かですが、10年以上前から同じ訴求が繰り返されている処を見ると、「未だにExcelを使っている人」は大量に残っており、寧ろ多くの人がこの属性であるからこそ、宣伝対象として有効とも言えます。

 

パソコン≒サーバ?

技術的なことをいえば、Windows10は、WindowsServerと同様の設計となっており、部分的にモジュール(dllなどのパーツ)を入れ替える事ができれば、同様の機能で動作させることも可能です。

とはいえ、現実的に日頃の業務に使うパソコンに、サーバとしての役割を期待することはまずないでしょう。例えば、各個人が持っているパソコンが、自分のメールを出すときのメールサーバであったり、他の人に情報発信する際のWebサーバである必要は全くなく、寧ろ管理が面倒になるだけです。

要するに、仮に能力があったとして、パソコンがサーバとして振る舞うことは、目的から逸脱しているということになります。

 

○○サービスは、Excelになれるか

新しい「○○サービス」は、Excel的に使えない

大抵の「Excel卒業後のサービス」は、「ノンプログラムでxxxができる」「Excel以外のアプリケーションも含めて自動化できる」といった、Excelにはできないこと(正確には、一般的な使い方ではできないこと)ができるという触れ込みで、確かにこれができると便利そうな機能が並んでいます。

一方で、それらのサービスで、Excelでは当然できた「範囲をまとめてコピペする」「修正段階に応じて、ファイル名を変えて保存しておく」「図を好きな位置に貼り付ける」「特定セルに色を付ける」・・・といったことは、まずできません。そんな使い方は間違っているという主張にも一理ありますが、逆にやりたい人に取っては重要な要素でしょう。

何だかんだと言われながらも、35年もの長きに渡って(初版が登場したのは1986年でした)多くの支持を集めてきたExcelには、支持されるなりの理由があるわけで、単純に「古い≒劣る」ではなく、違う道具と割り切るべきでしょう。

このように考えて見れば、「Excelはもう古い」という表現は、「宣伝の都合上、対象者が多いマーケットを選んだ結果」と言えそうです。

 

コンピュータ以外の例で考える

自転車は古いから、バイクを買おう ・・・ ?

コンピュータに限らず、一般的な消費財でも同様の表現はありました。

例えば、自転車より原付スクーターの方が上位であるとする、あるいはバイクより車の方が性能が良い、とするものです。

確かに、自転車に比べてバイクならこがなくても走りますし、一般的にはスピードも出せます。そんなバイクよりも、車の方が多くの荷物を運べて、雨に濡れずに運転できます。

しかし、本当に上位の代替材であれば、自転車はとうの昔に市場から消えているはずです。

 

必ずしも、全てを代替できているわけではない

自転車と車を比べれば、運べる量も限られていて、こがなければ走らないし、スピードも出ません。

一方で、車が入れない細い路に入ることができますし、駐車禁止の場所でも停めることができます。折りたたんで、電車にだって積めます。

こうした特長を見いだして、宅配の世界では車をやめて自転車に切替えることで、効率化を図っています。

もちろん、大都市間の長距離輸送を銀輪部隊に委ねているわけでは無く、最終拠点から戸口までの小口輸送に限ってですが、自転車を電動アシストにしたり牽引車を付けたりと、運用を変えることで20年前の自転車では考えられなかった使い方ができるようになったことで、新たな実用性が見直されているのです。

 

低機能なアプリでも、使いよう

Excelは十分過ぎるほどの機能を持っていますが、たとえ一部の使い方しか知らなくても、新しい発想で新しい運用をすれば、従来できなかったことができるようになります。

利用者が場数を踏む必要もあるでしょうが、10年後のExcelは今のExcelより相当に高度な使い方をされている筈です。

 

根拠の乏しい情報に踊らされて、小回りのきく自転車をダンプカーにしようとしてはいませんか?