道具としてのExcel活用

Excel資産を、どう評価するか?

 Excelファイルは「単なる、古い仕組み」なのか?

長年使われてきたExcelを、新しいシステムに置き換えるべきか。それとも、これまで蓄積された資産を活かすべきか。その判断には、開発会社と利用者の間で、意外なほど大きな価値観の違いがあるようです。

 SIerから見たExcel資産

先日、あるSIer(システム開発会社)を訪問した際、印象深い言葉を聞きました。

その会社では、顧客が大量に保有するExcelを継続利用したいと言ってきた場合、中身を解読してWebシステムへ作り直すそうです(当社がExcelを専門的に扱うことから、自動変換ツールでも持っているのでは?と思われ、呼ばれたようです)。

これに対し、数千ものExcelを一つずつ解読するより、まず業務の目的や要件を確認し、棚卸しして整理した上で、使えるものは活かせばよいのではないか、とご提案しました。データ量や処理の内容によっては、データベースやAIと組み合わせる方法もあります、と。

しかし、この考え方が受け入れられない理由を聞き、妙に納得しました。
曰く、「Excelのままだと、うちの社員数を食わせることができないから、Webシステム化しなくてはいけない」と。

利用者から見れば本末転倒にも思えますが、多数の技術者を抱えるSIerにとって、大規模開発によって仕事を確保するのは合理的な経営判断です。経営者として、規模は違えど、貪欲に売上を確保しようとする姿勢には、皮肉ではなく感銘を受けました。蓋し、人月型の受託開発では、こうした事業構造が大規模な再構築と親和性を持つことと思われます。

つまり、どちらが正しいかではなく、立っている場所が違うのでしょう。

 

Excelは、人とともに育つ知的資産

当社はExcelを専門的に扱う立場でもあり、利用者が構築したExcelファイルについて、少し違う見方をしています。

長年使われてきたExcel資産には、計算式やマクロ、帳票様式だけでなく、担当者の経験や、仕様書にはない業務ノウハウが蓄積されています。当社は、これを一種の「知的資産」だと考えています。

しかも、Excelの価値は蓄積された知識だけではありません。昨日までの手作業を関数に置き換え、繰り返し処理をマクロ化し、新しい例外に対応する・・・こうした工夫を重ねるうちにExcel資産が育ち、担当者自身も業務を理解し、改善する力を身につけていきます。

 

人がExcelを育て、Excelが人を育てる。

試して、失敗して、直して、また使う。Excelでは、利用者自身が改善の担い手になれます。その過程で、業務を理解し、課題を発見し、解決する力も養われていきます。

つまり、Excelの中だけでなく、それを使う人の中にも知見が蓄積されていくのです。

長年使われてきたExcelには、そうした試行錯誤の歴史が刻まれています。単なる完成済みの知的財産ではなく、人とともに成長する「知見の生命体」ともいえるでしょう。

 

当社が大切にするExcel文化

当社がExcelにデータベースやAIを組み合わせるのも、この考え方からです。

残すべきものは残し、整理すべきものは整理する。データの管理にはデータベースを、過去の知識の活用にはAIを取り入れ、既存の資産を起点に必要な部分から改善していく。そして、その仕組み自体が人の成長につながることを重視しています。

もちろん、大規模なシステム開発を必要とする企業にとって、SIerの組織力や開発力は必要不可欠な存在です。

一方で、「今あるExcelを捨てずに活かしたい」「長年培ったノウハウを引き継ぎたい」「必要なところから改善したい」と考える企業や部門もあるでしょう。

Excelを「古い仕組み」と見るか、「人を育て続ける知的資産」と見るか・・・そこには、システム開発の方法論以前に、大きな文化の違いがあります。

大切なのは、どの技術を採用するかだけでなく、現場の人が自ら考え、改善を続けられる仕組みを残せるかどうか、なのだと思います。

当社が大切にしているのは、Excelというファイル形式ではありません。人が知恵を注ぎ、その成果が人を育て、さらに新しい知恵が生まれる。その循環そのものなのです。

 

Excel資産の価値

長年使ってきたExcelを、どう引き継ぎ、どう発展させていくか・・・全面刷新をする場合であっても、今ある資産の価値を見直してみませんか?

当社では、既存Excelの調査・整理・ドキュメント化から、データベースやAIを組み合わせた改善まで、現状を活かす方法をご提案しています。

 

この記事を書いた人

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監査法人系コンサル会社・外資系金融機関などを経て、2000年に株式会社クレッシェンドを設立。四十数年のコンピュータ歴とともに、中小企業診断士として中小企業大学校の講師(中小企業診断士養成課程担当)等を活かして、2,000社を超える企業のIT戦略・導入に関与してきました。情報セキュリティスペシャリスト(国家資格)の認定も受けています。