事例紹介

テレワークは「目的」か? ~ 業務設計なしに「することが前提」 ~

「テレーワークをしていない」=遅れてる!?

危機感を煽る情報の氾濫

よくある、手段の目的化の好例

「中小企業の多くがテレワークを実施できない」「テレワーク導入が遅れる原因」「なぜテレワーク活用が進まないのか」・・・いずれも最近のメディア記事の見出しです。東京都も、テレワークにすれば皆がハッピーになる旨の広告を始めました。主旨の背景にあるのは「テレワークは皆でやるべき、できないのは何かがおかしい」という発想です。

しかし、「トラック運転手がテレワーク」「救急隊員がテレワーク」「農業をテレワーク」・・・いずれもデメリットの方が多そうです。

そもそも、ある目的のために必要がある(理由)からテレワークを導入する(手段)なのであって、テレワークを導入するために(目的)使い道を考える(手段)発想を疑ってみるべきでしょう。

現状はテレワーク=目的の情報が氾濫していますが、その結果業績が悪化しても、従業員にしわ寄せが寄っても、機密情報が漏洩してもよい、ということにはならないでしょう。

 

情報発信者の立場を考える

昨今「煽り運転」が話題になっていますが、相手の運転を「止める」「速度を上げさせる」といった行為を半ば強制することから、「煽り」とされているようです。

となると、こうした「まだテレワークしてないの?」的な見出しは、特に必要が無くても、しなくてはいけないような気にさせるという意味で、煽り記事といって良さそうです。

なぜそのような見出しになるかといえば、その方が「食いつき」が良くなるからです。SNSなど、アクセス数に比例して収益になる様なビジネスモデルであれば、一種のWebマーケティングとも言えそうです。

とはいえ、テレワークができない職種だって有るわけですから、一概に「能力不足でできない」と決めつけるのは無理があります。

具体例を挙げれば、飲食店は圧倒的多数が「中小企業」ですが、テレワークにするメリットはありません。しかし、「大半が中小企業である飲食店がテレワークを実施していない」のは事実でしょうから、「中小企業の多くはテレワークを実施できない」も嘘ではありません。が、実態に即した「事実」ともいえないでしょう。

 

ITツールは、目的を明確化し、そのために必要な手段として検討すべき

ポン付けイメージの強いITツール

行政が発行する広報誌に、地元企業がテレワークシステムを導入したことが「成功事例」として掲載されていました。何でも、ITが苦手な社員に対するサポートのおかげで、テレビ会議システムなどのITツールを導入して、テレワークが実現できたのだとか。しかし、効果や活用事例についての言及はありませんでした。

町工場の職人がテレークを導入しても、単純に「生産性がxx%も向上した」といった結果に至るとは、考えづらいところです。寧ろ「子供が工具でけがをした」「家事を手伝わない夫に妻がキレた」「つい食っちゃ寝で太りすぎた」・・・といったネガティブな事例も報告されています。大手モーター会社でも、生産性が30%に落ちた(70%減!)そうです。

更に言えば、ITツールは買ってきて据え付ければすぐ使える「ポン付け(取り付ければすぐ効果が得られる)」のイメージが強く、大半がそうした「導入事例」として紹介されていますが、あくまでこれは手段であり、目的は効率化や高速化・時間短縮・・・といった別なところにあるはずです。こうした「目的」は業務設計をして初めて明確化されるます。

逆に、人的要素中心のイメージが強い業態(例:旅館・料亭・・・)であっても、予約管理や売上集計などの事務処理は必要です。こうした業種は一見ITとは無関係に見えますが、実際に業務設計をした結果、Excelでシステム化して業務支援につながった例もあります。

 

戦略立案~業務設計がなければ、効果半減

本来は、業務上の課題に対して、その手段を選択した結果、たまたまその一つがITツールだった、というシナリオになるはずです。

飲食店であれば、売上=客単価×回転数となりますから、客単価を多少下げてでも回転数を上げようとする戦略なら、まず滞在時間を最小化するために「料理の提供するまでの時間を短くする」「片付ける時間を短縮する」・・・といった選択肢を検討し、それによる効果を見極めた上で、実現するための業務設計を行い、結果として「厨房機器を高性能化する」「オーダーが即調理場に反映されるようにする」「同じオーダーを同時に調理できるよう自動で調理指示を出す」といった作戦に落とし込み、結果として「どんな機械を導入」し、「どのようにシステム化」し、「どのように振る舞うか」の組み合わせるのかが決まるのではないでしょうか?

こうした作戦が事前に練られていればこそ、Excelのような簡単な道具でシステム化しても、十分すぎる効果が得られるのだと思います。

例えば、Excelではテレビ会議システムは作れませんが、分散した環境において進捗の同期を図ったり、それぞれの成果物を集約したり、優先的にとりかかる作業を自動的に割り当てる・・・といった支援システムは、十数年前からExcelとマクロで実現できています。

こうした戦略立案~作戦検討がなければ、場当たり的な対応となり効果は半減しますし、その実現手段として業務設計をしておかなければ、今の非効率なやり方をそのまま高速化しただけで終わってしまいます。

情報発信者も読んでもらうのに必死でしょうから、まずは読み手側が冷静に目的と手段を識別してはどうでしょうか。